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2022-04-27愛着とオキシトシンの関係
お知らせ
妊娠・分娩により母体はオキシトシンを大量に放出することが分かっています。
オキシトシンは、ヒトだけでなく哺乳類が共通に持つホルモンですが、よく知られている作用としては、妊娠中の母体の子宮を狭め、子宮口を広げることで出産を促す働きや、出産後の母体では乳腺から乳汁分泌を促すなどの働きがあります。
オキシトシンが出産に関与することは19世紀末からすでに知られており、オキシトシンという名前はギリシア語の「早く産まれる」という言葉から来ています。
オキシトシンは副腎皮質ホルモンなどに比べると原始的なホルモンとみなされてきた経緯も有り、あまり研究が進んでいませんでした。しかし20世紀後半になってオキシトシンの研究が進むと、その意外な作用が色々と明らかになってきました。
親子の絆を深めるオキシトシン
オキシトシンは母親が赤ちゃんに授乳する際に血中濃度が高まり、乳汁の分泌を促す働きがありますが、この他に母親が根気のいる育児に専念できるように、落ち着きを高める働きがあります。愛情深い養育者に育てられた子どもは、安心や安全を感じやすく、社会に適応しやすいということが知られていましたが、これはオキシトシンによる生物学的な作用によるものであることも分かっています。
また、オキシトシンは相手の表情を読み取る能力を上げることも知られており、例えばある研究によると母親が赤ちゃんを授乳する際のオキシトシンの分泌量が多いほど、赤ちゃんの「快」の表情をより正確に読み取れれるようになることが明らかになっています。つまり、授乳によるオキシトシンの作用により、母親が赤ちゃんの欲求をより正確に察知できる様になることで愛着が高まり、母性行動が促進されるというのです。
逆にこの働きがうまくいかないと、その子どもは多動や衝動性、不注意が起きやすくなることも分かっています。
「オキシトシン受容体」
オキシトシンは、様々な細胞表面に分布する「オキシトシン受容体」に結合して初めてその作用が発揮されます。ですからオキシトシン受容体の数が少ないと、いくらオキシトシンが大量に分泌されてもその効果を十分に発揮することができません。
私たちがもともと生まれ持ったオキシトシン受容体の数を減らさないことも、オキシトシンを高めること以上に大切です。
ではどんな時に減るのか? それは幼少期の養育のされ方によるところが大きいことがわかっています。不適切な養育を受けた人ほどオキシトシン受容体の数が少ない傾向がある研究で確認されています。ただし、たとえ不適切な養育を受けたとしても、それ以外の部分で補うことができ、新たな「安定した愛着」が形成できた場合は、オキシトシン受容体は減らないこともわかっています。つまり、オキシトシンを効果的に働かせるには、必ずしも養育環境だけで決まるものではなく、他者との豊かな関わりの中で「安定した愛着」を獲得することが重要なようです。
オキシトシンは免疫系だけでなく、神経系や内分泌系とも力を合わせられる
オキシトシンには、炎症を抑え、細菌やウイルスをやっつけるのを助け、傷口を癒し、組織が再生するのを促進する働きもあります。これはオキシトシンの単独の作用というより、オキシトシンが免疫系だけでなく、神経系や内分泌系とも力を合わせられるように、調整する役割を担うことで発揮されている作用と考えられています。つまりオキシトシンは、私たちに降りかかる様々なストレスから、心身を守ってくれる働きがあると言えます。もしこれがうまく働かないと、ストレスを感じやすく、幸福度が低下しやすいだけでなく、心身の病気にもなりやすくなります。
オキシトシンは、情緒的、認知的、身体的発達にも重要で、実際に愛着が不安定な子では、知的発達においても不利を生じたり、さらには成長が遅かったり、感染症にかかりやすかったり、自己免疫疾患やアレルギー疾患にも悩まされやすいとされています。